労働安全衛生については、労働災害の防止のための危害防止基準の確立と責任体制の明確化及び自主的活動の促進により職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的とした労働安全衛生法を順守することで事故が発生しないように、組織(企業)は“安全第一”や“災害ゼロ”をスローガンに定め、これを目指したしくみづくりに取り組んでいます。
このような中、「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針の改正(厚生労働省告示113号)」が2006年3月10日に行われ、この指針の改正において、厚生労働省労働局長は、組織の事業活動における危険性又は有害性を特定し、リスクの見積もり及びリスクを低減させる処置を組織的かつ体系的に実施するマネジメントシステムの普及、促進により労働安全衛生の水準を高めることの通達を都道府県労働局長宛てに出しています。これを受けてそれぞれの企業においては、労働安全衛生の管理水準の向上に向けて、マネジメントシステムの導入による自主的取組みが重要になってきています。
ここでA社とB社をのぞいてみましょう。
従来、労働安全衛生については、各企業が独自の取り組みを行ってきました。
同じように「安全第一」を謳っている組織でも、A社とB社ではその取り組み基準や内容は異なります。
例えば、A社では、ヒヤリハットを含む小さな事故でさえ起きてはいけない、という方針。全社を挙げて共通認識を持つべく最高経営者主導のもと、予防的活動を行っています。
一方、B社では、安全を心掛けることは当然だが、方針としてはどんな事故が起こるかわからないから事故が起きてから適切に対処しよう−。
これらの違いは、当然のことながらそこで働く労働者一人一人の安全管理に対する意識にも違いを生じさせます。
その意識の違いは、毎日の積み重ねで蓄積されていくのです。
そして、これらは重大事故などの緊急事態が生じたとき、顕著なものとなってあらわれるのです。
● リスク管理の甘さ。
● 本来、避けられたであろう多くの労働者の負傷、生産の遅れや中止などの様々な事象。
どれも起きてしまってからでは、取り返しのつかないものばかりです。B社のような事後対応だけでは弁解の余地がありません。
さらに、企業そのものの緊急時の対応にも差が現れます。
緊急時の対応の早さが、企業イメージを大きく左右しかねないことは言うまでもありません。
迅速かつ適切な対応ができないと、企業イメージにも大きく影響し、その後の企業の業績にも大きな打撃を受けることになります。
このような負の連鎖を引き起こさないよう1999年、OHSAS18001が誕生したのです。